ダイソン大学 概要


(Photo:https://www.dysoninstitute.com/)

ダイソン大学(Dyson Institute of Engineering and Technology)は2017年に著名な発明家であり、家電メーカーの創始者でもあるジェームズ・ダイソン氏が、英国の不足するプロダクト・エンジニアを養成するために設立した大学です。ダイソン氏は自身の財団を通じて、これまでの世界各地でエンジニアを養成するための問題解決ワークショップやアイディア・コンテストや奨学金支援を行ってきました。

2019年度の入学生までは、ダイソン大学の経営パートナーとなったウォーリック大学のカリキュラムを受講し、ウォーリック大学のエンジニアリングの学位を取得します。2020年度以降の入学生はダイソン大学の独自の学位を取得します。

ダイソン大学の最大の特徴は、在学中から週3日、ダイソン社のパートタイム従業員として雇用され、年間18,000ポンド(約245万円)の給与が支給されることです。

大学授業料は無料で、1年目はキャンパス内の学生寮施設を月550ポンド(約75,000円)で利用できます。通常の学生生活を送れば、無借金でエンジニアの学位が取得でき、優良企業でもあるダイソンへの就職もできる、とあって設立当初から人気があり、ケンブリッジ大学を辞退して進学した学生もいました。

ジェームズ・ダイソンは大学設立の理由を次のように述べています。

「英国のエンジニア不足は、ダイソンのさらなるテクノロジー開発や英国からの輸出増の妨げになっています。そこで私たちは自分たち自身でこの問題の解決に取り組むことにしました。新設する学士コースでは、学術的な理論の習得、実社会での就労と給与、それぞれの分野における専門家からの学びの場を提供します。世の中には私のようにエンジニアリングのことを考えずには生活できない人たちが大勢存在し、製品のあらゆる面に疑問を持ち、その仕組みや改善方法を考えている事を知っています。であれば、学士取得直後からそのままエンジニアリングの仕事に飛び込んでもよいのではないでしょうか?」

現在、ダイソン大学に入学できるのは、英国人か、既に英国で就労・就学できるビザを持っている外国籍の学生のみ、ということなので、一部の英連邦出身者などを除けば、外国人がこのプログラムに参加することはほぼ不可能です。しかし、ダイソン氏は単なる有力な寄付者でも、自らゼロから大学を立ち上げるような方法でもなく、費用対効果が高い方法で、学生と自社にとってのニーズを満たす方法を選択した、と言えます。

日本電産の永守重信会長が京都学園大学に100億円以上の私財を投入して自社グループのモーター開発エンジニアの養成プログラムを設立しましたが、ダイソン氏は27億円でケンブリッジ大学を辞退して進学する学生がいるプログラムを既に実現しているのです

ダイソン大学は新しい大学を設立したい人にとって良き参考事例になるでしょう。

*https://www.dyson.co.jp/community/pressrelease/20161107_InstituteOfTechnology_release.aspx