「実践的な知恵」中高校生向け参考書

実践的な知恵を構成する情報判断力、創造的思考力、情報発信力、関係構築力に関する参考書をご紹介します。中学生、高校生から読めるレベルの本を集めて見ましたが、大人が読んでも楽しめると思います。

情報判断力

情報を判断するには、その情報が何を主張しているのか、どのような根拠(証拠)で主張が成り立っているのかを、一歩立ち止まって考え、どのような立場の人が、何の目的で、情報を発信したのか、判断する思考動作が必要です。同時に、その情報に対して、自分はどう反応すればよいか、判断するための軸を持っておくことが、情報に流されないためには、大切です。

二番目の悪者(林  木林)
帯に書かれている“考えない、行動しない、という罪”という言葉が暗示するように、情報判断力から目を背け、「みんなそう言っているよ」「先生が正しいって言ってる」「大人がそう考えているんだから、そうなんじゃない?」という群心理がどんな悪者を生むか、小学生高学年から大人まで分かり易く書いた絵本です。

大人の直観vs子供の論理(辻本  悟史)
論理的な判断と先入観に基づいた行動の違いを認知科学や脳科学、生物進化の観点から解説した分かり易い本です。情報判断力を鍛えるための「一歩立ち止まって考える」習慣を持つことの大切や、思考・コミュニケーションの技術を鍛えるための科学的な根拠について学べます。

「質問する、問い返す」(名古谷 隆彦)
考える、とはどういうことか、手探りしている人の手引書です。

「その情報、本当ですか?」(塚田 裕之)
SNS時代など、情報を鵜呑みにしないために“一歩立ち止まって考える”ためのヒントが得られます。

へんな問題」(狩野みき)
狩野さんの本は中学生から社会人まで、演繹法や帰納法といった論理展開の基礎から先入観に気づくためのクイズまでを日常的なトピックスを用いながらQ&A方式で解説してくれています。

「サンプリングって何だろう」(廣瀬雅代ほか)
推計統計の中で理解が難しい、「ほんの一部のデータから全体を推測する方法」について分かり易い事例を用いて解説しています。大人が読んでも面白いです。

「パラドックスの悪魔」(池内 了)
論理学から物理、生命科学、政治の世界まで、さまざまな分野で起きている矛盾(パラドックス)をわかり易く紹介している良書です。

「星の王子さま」(A.サン・テエグジェペリ)
情報判断力はニュースやノン・フィクションだけでなく、物語や絵画、演劇や音楽のような芸術・創作物を体験することで鍛えられます。これは同時に情報発信力や問題解決力にも効くので、たくさん触れてほしいです。

「翻訳できない 世界のことば」(エラ・フランシス・サンダース)
情報判断力を鍛える上では、「自分には知らないことがある」、「世界には実際に経験することでより理解が深まることがある」といったことに気づける感性を養うことが大切です。こうした本を、見知らぬ土地の文化や考えに思いを寄せる力、
共感力を身につけるきっかけにして欲しいです。

「システム思考をはじめてみよう」(ドネラ・H・メドウズ)
世界がもし100人の村だったら」 のもとになった調査レポートを執筆した人によるシステム思考への導入書です。世の中には「1+1=2」では説明できないことがたくさんあるし、世界は複雑に絡み合って存在しています。それを事例を用いながら分かり易い言葉で解説しています。

「自分のアタマで考えよう」(ちきりん)
中学生・高校生の皆さんには、ぜひ「ちきりんの日記」を読んで頂きたいです。情報判断力には、情報の内容を吟味するだけでなく、その情報を自分はどう活かすか、という軸をもつ、という能力も必要です。ちきりんは、そのヒントをたくさんくれる謎の社会派ブロガーです。


「徹底的に考えてリノベをしたら、みんなに伝えたくなった50のこと」(ちきりん)
自分の家を改築することは、一生のうちで1回か2回くらいの大仕事かもしれません。
この大仕事を、他人任せでも、自力で全部やるのでもなく、他者と共同して進めていく、「プロジェクト・マネジメント」の考え方がストーリー形式で学べる良書です。

創造的思考力

問題解決力は、まだ気づかれていない課題を発見し、自ら問いを設計して、問題を解いていく際に必要となる能力です。問題へのアプローチは、ある日、山奥の温泉に浸かりながら突然閃くものではなく、科学的な思考法や人が陥り易い心理的なコンセプトなどを理解すること、論理学のエッセンスを応用することで身につけられます。

「世界一やさしい問題解決の授業」(渡辺 健介)
手っ取り早い問題発見、分解法に関する本です。書いた人は世界的なコンサルティング会社マッキンゼーの元コンサルタントで、基本的に経営コンサルティング会社の新入社員はこれと似たようなトレーニングを受けます(笑)

「はこははこ?」(アントワネット・ホーティス)
「自分は発想力が足りないな〜」 と感じたら、子供の時に読んでもらった絵本に戻るのも一つの手です。大人が読んでもハッとさせられる、楽しい本です。

「ハチはなぜ大量死したのか」(ローワン・ジェィコブセン)
ある現象について観察し、考察し、仮説を検証していく研究者達の試行錯誤と探究の面白さについてまとめられた本。ちなみにまだ未解決なので、ぜひご自身でも原因について考えてみてください。

「料理の四面体」(玉村豊男)
“抽象化”という考え方を理解したい人にとって参考になります。全ての料理は4つの要素の組み合わせである、という大胆な解説です。同意する、しないよりも、その着想と考え方が参考になります。

情報発信力

情報発信には、文章を書く、スピーチを行なう、といった文章と口語に表現、さらには言葉ではなく、表情で相手に自分の感情を伝える、といった様々な表現方法が存在します。また、伝え方も論文、雑誌などへの記事寄稿から、プレゼンテーション、絵画、映像、演劇などさまざまな場を設計することができます。自分の考えを相手に伝える際、どのような対話を設計すべきか、考えることが大切です。

「伝わる!揺さぶる!文章を書く」(山田ズーニー)
作文が苦手だ、という人に先ず手に取ってもらいたい本。作者は元小論文の通信講座を添削していた人です。型にはまった文章よりも7つの要件を満たして、自分の文を書けるようになることを目指します。

「「自分メディア」はこう作る!」(ちきりん)
超人気社会派ブロガー“ちきりん”さんが自分のブログをどのような仕組みで運営しているか解説した本です。皆さんもSNSで発信する機会があるのではないかと思いますが、とても参考になる情報が詰まっています。

「私が「軽さ」を取り戻すまで」(カトリーヌ・ムリス)
情報発信の方法は何も文章に限りません。それは写真であったり、絵であったり、音楽であったり、体を使った芸術表現であったり、様々な方法があります。フランスで最も有名な風刺漫画雑誌だったシャルリ・エブドは襲撃され、多くの人が亡くなりました。著者はその襲撃を逃れましたが、長く、苦しい精神状態が続きましたが、その回復の過程を風刺画を使いながら作品に仕上げています。風刺画なのに、どこか温かく、知性を感じる素晴らしい表現を実現しています。

関係構築力

情報発信力が自分の考えをどのように表現するのか、という点にフォーカスしているのに対し、統率・協調力は「人とどのように関わるか」という相互交流における効果的なコンセプトを取り扱っています。

「大学で学ぶ議論の技法」(T.W.クルーシアス他)
中学、高校生には少し早いかもしれませんが、最近ではディベート大会なども行われており、参考になるでしょう。

「事実はなぜ人の意見を変えられないのか」(ターリ・シャーロット)
人を説得するのに必要なのは、科学的根拠に基づいた論理的な結論ではなく、
その人の信念を構成しているものを認め、自分と共通する点を丹念に確認し合うことかもしれません。最新の脳科学と認知科学を用いて、説得と影響力について分析、解説された良書です。

「64SHOTS」(ケビン・ロバーツ)
世界一オシャレなリーダーシップ本。世界的な広告代理店を率いるKevin Robertsによる“抵抗できない”魅力をもった人になるためのヒントを集めた本です。おしゃれな写真集のような本なのでインテリアとしても使えます。

「本当の勇気は「弱さ」を認めること(ブレネー・ブラウン)
傷つく人の心は、哀しみや怒りといったネガティブな感情だけでなく、幸せや喜びとも密接に関連している。“人は選択的に感情を麻痺させることができない”ので
弱さや不確実なことを覆い隠すために自分を偽ると恐怖は減らせても幸せな感情も同時に減ってしまう”、というブラウン博士の発見を纏めた本です。

「ビジョナリーであること」(パヴィスラ・K・メータ、スキトラ・ジェノイ)
インドで眼科を営むある病院には他にはない秘密があります。そこには慈悲とビジネスを結ぶ奇跡が存在するのですが、その内容はぜひご自身で見つけてください”。