MonotaRO-工業用副資材のAmazon.com

MonotaROという会社をご存知だろうか?

創業者の瀬戸 欣哉さん(現在LIXILの社長)は住友商事在職時にDartmouth CollegeにMBA留学。インターネット・バブル期だったこともあり、在学中のベンチャー・プロジェクトでAmazon.comに似たようなビジネスを提案して以来、いつかは自分もITで勝負したい、と考えていた。

留学後、住友商事に帰り、エネルギー関連の仕事に配属されたが、ITへの情熱は冷めず、社内起業することを決意、当時注目していた工業用の副資材(製造工程で消耗されるテープ・接着剤・溶接材・研磨材・安全防具・梱包等)の流通構造にAmazon方式が応用できる、と考えた。

しかし、瀬戸さんはITエンジニアではなく、ターゲットにした業界の知識も殆ど無く、スタート時はカタログ販売を中心とした完全なアナログ企業だった。ほどなく資金が枯渇しそうな時に、米カタログ販売大手のグレンジャー社との提携に成功、さらに他の財閥系商社からも資金調達を行うという当時としてはご法度的なファイナンスを行ない、30億円を獲得した。

さらに、そこから地道に10年、ITを駆使したユーザー・カテゴリの細分化とコスト構造の合理化により、従来の間接資材卸と比較して圧倒的な利益成長率を実現している。比較対象となる同業のトラスコ中山は売上高こそMonotaROの4倍以上だが、営業利益額は2倍程度に留まる。そして、MonotaROの営業利益率は同業他社に比べ、圧倒的に高い。

2003年には25%程度だったWeb経由の発注は2014年には80%近くまで上昇し、文字通り、ITを駆使した会社になった。

新興企業なので、なかなか情報が取りにくいのが難点だが、同社が導入しているデータマイニング・ソフトウエア会社のユーザーカンファレンスの発表会でその収益性の高さを可能にする方法について鈴木経営企画室長(現社長)が行ったプレゼンテーションで幾つかのポイントが読み取れる

                (写真は2011年6月9日付MonotaRo社ニュースリリースから転載)

  

1.400以上のユーザー・カテゴリを毎日仮説、毎日キャンペーンを行ない、カテゴリの検証

2.60種類以上の変数(Variable)を用いてユーザー・カテゴリを作成

3.ユーザ・カテゴリのテスト方法にキャンペーン・マネジメント・ツール(ソフトウェア)を導入し、カテゴリ検証を迅速に低コストで実現

4.6種類のカタログを用意しているが、全てのカタログを送付している客は全体の3%未満

5.価格に敏感なユーザーを狙い、プライベートブランドで同等品よりも少し性能を落としたものを供給

Amazon.comはB to Cの消費財物流で大成功を収めたが、MonotaROはこれを工業用間接資材で実現している。

実は、Amazonはこうした工業用副資材や研究所向けの実験用品等を取り扱うAmazon Supplyというサービスを開始し、この分野への参入を試みたが、現在は撤退している。

一件、地味な会社だが、今後、大きな成長を期待している。

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